hatto

2025/09/24 10:00

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先日、メモリアルボックスをご注文いただいたお客さまから、とても印象深いお話を伺いました。

そのエピソードが、私自身の過去の記憶と重なって、
アイデンティティや文化について
深く考えさせられる機会になりました。

アメリカで育つお孫さんのために

そのお客さまは、お孫さんのために
メモリアルボックスを注文してくださいました。
メモリアルボックスは、
お子さんのファーストシューズや思い出の品を
まとめて保存しておく木製の箱で、
表面にはお子さんのお名前と
出生情報を刻印する商品です。

お客さまの娘さんはアメリカの方と結婚され、
現在はアメリカで生活されているそうです。
そこで生まれたお孫さんは、
日本とアメリカのふたつの国籍を持つお子さんでした。
成長すればいずれ、どちらかの国籍を
選択する時期が来ることになります。

「きっとアメリカ国籍を選ぶと思います」
とお客さまはおっしゃいました。
お孫さんの生活環境はアメリカが中心で、
娘さんの方針もあって
普段はほとんど英語で過ごされているそうです。
日本語はあまり理解できないとのことでした。

でも、一時帰国の際には
短期間でどんどん日本語が上達して、
しまじろうのアニメを楽しそうに観ている姿を見て、
日本での時間がお孫さんにとって
特別なものになっていることを実感されたそうです。

漢字の名前に込められた思い

お孫さんのお名前は、
アメリカで馴染みやすい音でありながら、
きちんと漢字も用意されていました。

通常、メモリアルボックスには
ファーストネームのみを刻印することが多いのですが、
お客さまのご希望で苗字も含めた
漢字のお名前を刻印させていただくことになりました。

お客さまは、はっきりとは言葉にされませんでしたが、
お孫さんに日本にもルーツがあることを知っていてほしい、
そんな想いが込められているように感じました。

大学時代の友人の記憶

このエピソードを伺った時、
私は大学時代の友人のことを思い出しました。
彼女は在日韓国人で、
韓国人としてのアイデンティティを大切にしている人でした。

みんなで浴衣を着ようという話になった時も、
彼女はチマチョゴリを選びました。
また、将来は絶対に韓国人と結婚すると決めている
と話してくれたことがあります。

まだ19歳か20歳くらいでしたが、その理由は
「子どもが生まれた時に、その子が自分は何人なんだろうと悩まなくていいようにするため」と説明してくれました。

当時の彼女は日本人の男性とお付き合いをしていましたが、
必ず別れが待っている関係に苦しんでいるようにも見えました。

そしてその頃の私は
彼女の気持ちを理解することができませんでした。
国籍なんかより気持ちの方を大事にすればいいのに、
と単純に考えていたんです。

アイデンティティについて考えたことのなかった私

振り返ってみると、私は両親ともに日本人で、
日本で生まれ育ち、旅行以外で海外に行ったこともありませんでした。
国というアイデンティティについて
深く考える必要がなかった環境にいたんです。
だからこそ、彼女の葛藤を理解できていなかったのだと思います。

でも今回、メモリアルボックスを
ご注文いただいたお客様のお話を伺って、
少し通じるものがあるなと感じました。

アイデンティティというものは、
生まれ持ったものと周りの生活環境、
そしてその時々の個人の選択という
いろんな要素の間で、揺れ動いているものなんだろうなと。

文化を残そうとする行為の意味

友人がチマチョゴリを着ることと、
お客様が漢字の名前を刻印したメモリアルボックスを
作ることには、共通する意味があるように思います。

それは、文化やルーツを残そうとする行為であり、
その存在を示す行為なのではないでしょうか。

形は違えど、どちらも大切なものを
次の世代に伝えていこうという想いから
生まれた選択だと思いました。

お客様から学ばせていただくこと

今回のように、時々お客さまが
貴重なお話を聞かせてくださることがあります。
それが私自身の記憶や経験とつながって、
新たな気づきを与えてくれることも多々あります。
商品をつくる中で、私たち自身も
本当に多くのことを学ばせていただいています。

家族の形や愛情の表現方法は人それぞれですが、
どの家族にも共通しているのは、
大切な人を想う気持ちなのだと改めて感じました。

そんな想いに少しでもお応えできるよう、
これからも一つひとつの商品を
心を込めてお作りしていきたいと思います。