2025/09/16 12:11
平穏な日常を襲った出来事
ごく普通の平日。
私は自宅から自転車で20分ほど離れたアトリエで、いつものように夫と一緒に仕事をしていました。 住宅街に建つわが家の両隣も、ごく普通の一戸建て住宅。 まさかその片方の家が、この日火事になるなんて想像もしていませんでした。
反対側のお隣の方から電話がかかってきたのは、夕方のことでした。 「隣のお宅が火事になってます」という言葉に、一瞬頭が真っ白になりました。でも電話口では「何かあったらまた連絡しますね」と言われ、そんなに大変な状況ではなさそうだなと思いながらも、帰宅できる距離だったので様子を見に帰ることにしました。
普段私は自転車で通勤してるんですが、この日は夫のバイクの後ろに乗って一緒に帰宅することにしました。 財布もカードも持たず、スマートフォンだけを持ってとりあえず家に向かいました。 でも一駅手前からすでに煙が見えていて、これは想像以上に深刻な状況かもしれないと胸騒ぎがしました。
目の当たりにした現実
家に向かう道路は途中で封鎖されていました。 警察の方に事情を説明して通してもらい、実際に家の前まで行ってみると、まさにドラマで見るような光景。 お隣の家から炎が上がって、真っ黒な煙が立ち上っていました。 家と家の間には少し距離があるものの、炎の勢いを考えると延焼の可能性も十分にありました。
消防士の方々が家と家の間に放水をして、延焼を防ぐ作業をしてくださってたんですが、私たちは家の中に入ることも許されず、何かを取りに行くこともできない状況でした。 ただただその場に立ち尽くして、どうしようという思いだけが頭の中をぐるぐると回っていました。
幸い、火事になったお宅の方は留守中で、怪我人はいませんでした。 でも火事を目の当たりにするのは初めてのことで、頭の中は混乱状態。 延焼したらどうしたらいいんだろう、今日はどこに泊まったらいいんだろう、まだ学校にいる息子のお迎えはどうしよう、いろんな心配事が次から次へと浮かんできました。
地域に支えられて
こんな緊急事態で、改めて感じたのは人とのつながりでした。 消防士の方々はもちろんのこと、警察の方、電力会社やガス会社の職員の方々など、たくさんの人が手を尽くしてくださいました。 顔を真っ黒にしながら消火活動に当たる消防士の方たち。暑い中での作業にも関わらず「水分をとってくださいね」と私たちにも声をかけてくださいました。
反対側のお隣の方も心配して声をかけてくれて、近所のママ友は「いつでも来ていいからね」と言ってくれました。 普段の生活では決して濃い繋がりではない近所付き合いが、こうした緊急時にどれほど心の支えになるかを実感しました。
しばらくして消防士の方々が「ほぼ鎮火」と話しているのが聞こえました。煙も見えなくなって、外からではなく中に入っての消火活動に替わりました。 そこで私は一人で息子のお迎えに向かったんですが、帰宅してみると鎮火どころか再び勢いよく燃え始めていました。 結局、通報から完全な鎮火まで5時間以上かかったようです。
思いがけない出会いと助け
近所の方々が心配して様子を見に来てくださる中、息子が所属するサッカーチームのコーチとその息子さんが偶然通りかかりました。 そして「大変だろうから」と言って、急遽息子を一晩預かってくれることになったんです。 息子にとっては同じサッカーチームの仲間とのお泊まり会のような感覚だったようで、むしろ楽しそうに出かけていきました。
私は普段、hattoというブランドで、家族の絆について考えながら仕事をしていますが、この体験を通じて、人とのつながりが家族だけでなく、もっと広い範囲での絆として実感できる出来事になりました。 子育てをしていると、つい家族だけの世界に閉じこもりがちになることもありますが、地域の中で子どもが育てられているということを改めて感じました。
火事の後始末と学び
自宅への被害は、煙が家の中に入り込んだので、かなりきつい匂いが数日経っても残っていました。 洗濯物はもちろん、服やソファーなどの布製品にも匂いが付いてしまいました。 また、消火活動による放水で家の中が水浸しになり、網戸が溶けたりもしました。
でも、ぜんぶお金で解決できる問題。 延焼せずに済み、怪我人も出なかったことを考えると、本当に不幸中の幸いでした。
火事という大変な出来事でしたが、結果的に私たち家族にとって、そして息子にとっても、人とのつながりの大切さを学ぶ体験になりました。


 
 
 
							