hatto

2025/09/10 11:53

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▷ハンドメイド作家じゃない

日常が慌ただしく過ぎていくなかで
ふと立ち止まって考えさせられる出来事がありました。


先日、お仕事の場で
偶然お話しする機会があった方との会話。
その方はhattoのことをご存知なかったんですが、
「お仕事は何をされているんですか?」と尋ねられて、
私は「雑貨を作って売っているんです」と答えました。
すると、その方は「お教室をされたらどうですか?」
と提案してくださいました。


知り合いのハンドメイド作家さんが
教室運営で成功されているという話を聞かせてくれて、
有形のものを売るだけでは限界があるから、
教室運営というもう一つの柱を持つといい、という
とても理にかなった提案。


成功されてる作家さんは
そうやって事業を発展させているのかもしれない。


その時、私は何と答えたか。
「うちはレーザー加工機を使って刻印するという
商品ばかりなので、教室をやっても
教えられることがないんですよね」
この返事をした後、妙なモヤモヤが残りました。


アドバイスをくださった方に対してではなく、
自分の答えに対して、なんともいえない違和感がありました。


▷説明できなかった想いの正体

そのモヤモヤの正体は、
とっさに自分の想いをうまく説明できなかったことへの
歯痒さでした。


hattoはワークショップを開催しています。
でも、それは一般的にイメージされる
「教室」とは少し違うもの。


私たちにとってワークショップは、
技術を教える場所ではありません。
家族が一緒に過ごせる時間を作る場所なんです。


その違いを説明するのは少し難しいですが
多くの教室では「できるようになること」が
目標とされるんだと思います。


生徒さんが技術を身につけて、
一人で作品を作れるようになることが、成功の証。
でも、私たちが届けたいのは、
技術ではありません。


家族で一緒に過ごす時間そのものを届けたい。
そんな想いがあります。


現代の忙しい日常の中で、
家族が同じ時間を共有することは、
意外と難しくなっているんじゃないかなと感じます。


子どもは習い事や宿題で忙しくて、
大人は仕事に追われている。
家族が揃って食事をする時間さえ、
確保するのが大変という家庭も多いはず。


そんな中で、「一緒に何かを作る」
という体験は、自然と会話を生み出します。
普段は見せない子どもの集中した表情や、
意外な発想に出会えます。


親も童心に返って、一緒に悩んだり、笑ったりできます。
そういう時間を提供したくて、
私たちはワークショップをやっています。


だから、先生として誰かに何かを教えるという
「教室」の形とは、根本的に違うのです。


ハンドメイド作家という呼び方への違和感
同じように、「ハンドメイド作家」
と呼んでいただくことがありますが、
これも実は少し違うなと感じています。


確かに私たちも、手を動かしてモノを作っています。
メモリアルボックスの桐箱は
職人さんに作っていただいているし、
工程的にはハンドメイドと言えるかもしれません。


でも、本質的には、
「手作りしたものを売る人」ではないと思っています。


私たちが一番時間をかけているのは、
デザインの前段階。
どんな家族の、どんな場面に、
どんな気持ちで寄り添えるかを考えること。


子どもの成長記録を残すアイテムを作る時も、
単に「可愛い」「おしゃれ」というだけでは足りない。


忙しい毎日の中でも無理なく続けられる仕組みや、
家族みんなが参加できる要素を
盛り込むことを大切にしています。


商品開発の過程では、
家族の日常を想像する時間が長いです。


朝の慌ただしい時間、
夕食後のほっと一息つく時間、
子どもが寝静まった後の静かな時間。
そんな日常の中で、その商品が
どんな風に家族の生活に溶け込むかを考え抜く。


これは、いわゆる職人さんの仕事とは違うし、
技術を教える先生の仕事とも違う。


まったく違うアプローチでの仕事だと感じています。
家族の絆をデザインするということ
では、私たちは何者なんだろう。


家族の絆が少しでも深まるようなきっかけを届けたい。
それが雑貨という形だったり、
ワークショップという体験だったり、
その時々で形は変わります。


でも、いつもその中心にあるのは、
「家族がつながる時間をどうやって生み出せるか」ということ。


家族の絆を深めるということは、
特別なことをしなければならない
ということではありません。


むしろ、日常の何気ない瞬間に、
ちょっとした工夫を加えることで
生まれるものだと思います。


子どもの作品を大切に保管するための
ボックスがあれば、
親子で一緒に思い出を振り返る時間が
生まれるかもしれない。


家族の写真を手軽に飾れるアイテムがあれば、
毎日の会話の中に自然と家族の思い出が
登場するかもしれない。


現代の子育てでは、
「ちゃんとできているか」
という不安がつきまといます。


SNSで他の家族の様子を見ては、
「うちは足りていないのではないか」
と心配になる。
「もっと子どもと向き合わなければ」
と焦る気持ちもある。


でも、そんな時に必要なのは、
新しい技術を身につけることでは
ないと思います。


今ある日常の中で、
家族が安心して過ごせる環境を作ることです。
子どもにとって家族が「心の安全基地」となり、
親にとっても子育てが少し楽しくなる。


そんなサポートができればと思っています。
形にこだわらない、想いを大切にする仕事
だから私たちは、
職人でもハンドメイド作家でもなく、
先生でもない。


「家族のつながりをデザインする人」
でいたいと思っています。


商品を作ることも、教えることも、
それ自体が目的ではありません。
家族の絆を深めるための
手段の一つに過ぎないんです。


この仕事を続けていく中で、お客様から
「子どもが喜んでくれました」
「家族の会話が増えました」
といった声をいただくことがあります。


そんな時、私たちが目指している方向性は
間違っていないのだと感じます。


技術的な完成度や売上の数字も大切ですが、
それ以上に
「この商品が誰かの家族の時間を豊かにしているか」
ということを常に問い続けたいです。


家族の形は、家庭それぞれに違います。
絆の深め方も、それぞれに違う。
私たちにできることは、それぞれの家族に合った
「つながりのきっかけ」を提供すること。


改めて確認できた想い
先日の会話で感じたモヤモヤは、
自分たちの仕事への想いを
改めて確認する良いきっかけになりました。


とっさにうまく説明できなかった想いを、
こうして言葉にしてみると、
改めて自分たちの仕事の意味が見えてきます。


家族の絆をデザインする仕事。
その想いを、これからも大切に育てていきたいです。