2025/09/01 13:43
今日は「装丁から始まる読書」
紙の本の装丁が持つ魅力について
考えてみたいなと思います。
一冊の小説との出会い ~装丁に込められた作者のメッセージ~
私は今、つぎに読もうと思っている、
とても気になっている本があります。
それは、どなたかが紹介されていたのを
見かけて興味を持った、
カツセマサヒコさんの『ブルーマリッジ』
カツセマサヒコさん、ご存知でしょうか?
正直なところ、私は最近まで
作者の方のことを知りませんでした。
じゃあ、なんで私がこの本に
興味を惹かれているのかというと、
実は小説の内容やストーリーよりも先に、
「装丁」に込められたこだわりを
知ったからなんです。
装丁とは、ブックデザインとも
言われたりしますが、
本の表紙や帯、カバーなど、
本の外側のデザイン全体のことですね。
装丁デザイナーや装丁家、
と呼ばれる専門家がいるくらい、
奥深く専門的な分野。
その装丁についてのこだわりを、
カツセさんご本人が
SNSで書いていたのを目にしたのが、
始まりです。
傷やシワを「愛する」カバーの秘密
この装丁のこだわりが、
本当に印象的でした。
それはカバーにトレーシングペーパーを
使っているということ。
第一印象は
「おしゃれな装丁だなぁ」でした。
でもおしゃれにするために
選ばれた紙ではありませんでした。
トレーシングペーパーというのは、
薄くて半透明な、
一般的なコピー用紙よりも
少しカサカサとした固めの紙ですよね。
わが家でも、子どもが写し絵に
使ったりしています。
この紙の特性として、
少し折れたりするだけで、
くっきりと筋が入ってしまい、
一度ついてしまうと元には戻らない、
という点があります。
つまり、傷や折り目といったものが、
とてもつきやすい素材なんです。
それをあえて、本のカバーに使っています。
そのトレーシングペーパーの
カバーに込められた意味について、
カツセさんはこう語っていました。
「どれだけ大切に扱っても、本を読み進めていくと、どうしても傷や汚れというのはついてしまう。でも、それは生活そのものに近い」
確かに、私たちが生活する上でも
大切にしたいと思っている誰かを、
無意識のうちに傷つけて
しまうことはあります。
たとえ目を背けたくても、
一度ついてしまった傷やシワは
消えることはありません。
カツセさんは、このカバーもまた、
生活や人生そのもののように
シワがついていくものなのだ、
と表現されていました。
「「汚れたから捨てる」みたいな、ちょっと乱暴で、潔癖すぎる感覚を、この物語に触れている間は少し横に置いといてもらえないか」
そして、「傷やシワや汚れも、そのまま愛せるような本が、生活が、人生がありますように」という言葉で締めくくられていました。
このSNSの投稿を読んで、
私は「すごく読んでみたい!」
という気持ちに駆られました。
紙の本だからこそ生まれる、特別な読書体験
そして同時に、
私はまだこの本を手にすらしていないのに、
もう読書が始まっているような
そんな感覚がありました。
まだ手元にないのに。
作者の哲学が装丁を通して伝わってきて、
すでに物語の一部に触れているような、
そんな読書体験が始まっているような
感覚でした。
私自身、もともと本は電子書籍ではなく、
紙の本で読むのが好きです。
その手触りや、ページをめくる感触、
本の重みなどが、読書の時間を
より豊かなものにしてくれると
感じているから。
でも、このカツセさんの小説は、
特に紙の本だからこそ意味がある、
と感じます。
その装丁に触れて読むことで、
物語の感じ方が全く違うものに
なるような気がしています。
傷やシワが刻まれていくカバーに触れながら
本を読み進める時間は、
きっと電子書籍では味わえない、
特別な時間になるだろうな、と思います。
日常の「傷」を愛するということ
今日は装丁から始まる読書ということで、
紙の本の装丁が持つ奥深さについて
考えてみました。
このカツセさんの装丁に込められた
メッセージは、家族との日々にも
通じるものがあると感じています。
子育てをしていると、
思い通りにいかないことや、
予期せぬ傷やシワが、
家族の関係性や生活の中に
刻まれていくことがあります。
そうした傷や困難も、
避けるのではなく、
それも含めて愛せるような心持ちで
日々を過ごせたら、
どんなに豊かなことだろう、
と改めて考えさせられました。
私たちのものづくりも、
真鍮の経年変化を通して、
時間が刻む傷や色の変化を
「美しさ」として愛でることを
大切にしています。
本の装丁が教えてくれたように、
日々の生活の中で生まれる
「痕跡」を愛おしく思う心を、
これからも大切にしていきたいです。
今日も最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
もしよろしければ、
記事への「いいね」やコメント、
そしてフォローをいただけますと、
うれしいです。