2025/08/25 14:45
今までお付き合いいただいた、
新商品ができるまでの裏側をお届けするシリーズも、
今回が最終話となります。
真鍮の素材選びから始まり、
偶然のロープの形を捉えたデザイン、
そして試行錯誤を重ねた表面加工を経て、
いよいよ商品の最終仕上げの段階に入りました。
最後に決めるべきことは、
しおりに添えるスウェード紐と、
それを包むパッケージデザインの二つです。
▷しおりに結ぶ、本革のスウェード紐へのこだわり
まず、しおりに結びつける紐についてです。
最初は、私も普段から愛用していて
しおりによく使われている、
しなやかで扱いやすい「唐打紐」という
組紐の一種を使うつもりで準備を進めていました。
色のバリエーションも豊富で、太さもいくつか揃え、
実際に試作した真鍮のしおりに結びつけて、
しばらく自分で使ってみたりもしました。
でも、どうも、どこかしっくりきませんでした。
真鍮の持つ落ち着いた質感や、
私たちがこのしおりに込めた想いと、
唐打紐の軽やかな印象が、
わずかにミスマッチのように感じられました。
そこで、改めて紐の素材から検討し直すことにしました。
次に出てきたのが「スウェード紐」という案でした。
ただ、一般的に手に入るスウェード紐の多くが
合成皮革だったのです。
最近の合成皮革は本当に質が高く、
見た目も手触りも本革とほとんど区別がつかないほどです。
しかし、決定的な違いが一つあります。
それは「経年変化」です。
今回のしおりでは、
真鍮という経年変化を楽しむ素材を選んでいるからこそ、
紐にも同じように、時間と共に風合いが増していく
天然素材を選びたいという強い思いがありました。
そこで、本革のスウェード紐を探すことにしました。
大型の手芸店にも足を運びましたが、
「本革のスウェード紐は取り扱いを終了しました」
と言われることもあり、
なかなか理想の仕入れ先を見つけることができず、
少し苦労しました。
それでも諦めずに探し続けた結果、
ようやく、私たちの求める品質の本革スウェード紐を
扱っている業者さんと巡り合うことができ、
最終的に、真鍮の色味にもよく合う、
深みのある5色のスウェード紐を仕入れることが
できるようになりました。
実際に使ってみると、真鍮との相性は想像以上に良く、
本に挟んだ際にも邪魔にならない柔らかな質感も、
しおりにぴったりだと感じました。
この5色のスウェード紐には、
私たちなりの想いを込めています。
ご家族それぞれが自分の好きな色を選んで使うのも素敵ですし、
もちろん、全員お揃いの色で使うのも良い。
それぞれの家族の形に合わせて、
自由に選んでいただけたら嬉しいなと思っています。
▷想いを丁寧に包む、シンプルなパッケージ
次に、しおりを包むパッケージデザインについてです。
パッケージは、できる限りシンプルでありながらも、
手にした時に少し特別な気持ちになれるような、
意味を持たせたものにしたいと考えていました。
hattoの商品は、このしおりに限らず、
「誰かへの贈り物」ではなく「家族の暮らしに寄り添うもの」
だと考えています。
日々の生活の中で、
何気なく過ぎていくように感じる時間の中にこそ、
実はとても大切な瞬間が宿っていると考えています。
だからこそ、商品をまるで贈り物のように
丁寧に包むことを大切にしています。
このしおりを手にした時に、
「今日はちょっと特別な日かもしれない」と感じてもらえるような、
そんな小さなきっかけを作れたら嬉しいなと思い、
今回のしおりも、一つ一つ箱に入れてお届けする仕様にしました。
パッケージのデザインは、
真鍮の落ち着いた色味と、
選んでいただいたスウェード紐の色が引き立つように、
シンプルでな印象に仕上げました。
箱を開けた瞬間に、しおりの佇まいと、
選んだ紐の色が目に飛び込んでくる。
そんな、ささやかながらも心に残る体験を
提供できればと思っています。
▷「knot」という名の、家族の結び目
最後に、このしおりの商品名を決めました。
名前は「knot(ノット)」。
英語で「結び目」という意味です。
今回のしおりのデザインには、
偶然の形を捉えたロープのモチーフを取り入れています。
ロープの結び目は、まさに家族の繋がりを
象徴するもののようだと感じ、この名前をつけました。
この「真鍮のしおり - knot」という
新しい商品を作り上げる過程は、
決して平坦な道のりではありませんでした。
思い通りにいかないことばかりでしたが、
それでも今、こうして完成を迎えることができ、
本当に良かったと思っています。
ただ、私たちにとって、
ものづくりは作って終わりではありません。
私たちが心を込めて作ったものが、
誰かの手に取られ、使われていくことで、
ようやくその役割を果たすことができるのだと思っています。
長くなりましたが、ここまでお付き合いいただき、
本当にありがとうございました。
もし、この「真鍮のしおり - knot」を手に取っていただけたなら、
それが、あなたの、そしてあなたのご家族の読書時間に、
そっと寄り添う存在となれることを心から願っています。