hatto

2025/05/19 17:12

ここまでは、コンセプトや素材についてなど
頭の中で考えを巡らせる「思考」の工程が中心でした。

ここからは、いよいよその思考を具体的な形にしていく、
「創作」の工程に入ります。
コンセプトや素材で培った想いを、
どのようにデザインとして表現するのか。


▷「家族で使う」が導くデザインの前提

デザインを考える上で、
いくつかの大切な前提がありました。
まず「家族で使ってもらう」というコンセプトから、
しおりは「2枚以上のセット」で
販売することを決めました。
まずは2枚セットと3枚セットから
スタートする予定です。

さらに、このセットの複数枚を
「並べることで繋がりを表現できる」デザインにしよう、
というのも大切な前提でした。

家族構成は変わることもありますし、
しおりもいつも全員分が揃って
使われるとは限りません。
例えば、3枚セットのうちの
1枚だけが使われたり、
家族が増えて買い足したり、
汚れてしまったり壊れてしまったりして
1枚減ってしまったりすることも考えられます。

どんな風に並べても、また何枚になっても、
どこかに「繋がり」を感じられるような、
そんなデザインにしたいと考えました。

それは、家族が物理的にいつも一緒にいなくても、
心のどこかで繋がっている、というメッセージにも
重なるような気がしています。


▷「家族の絆」を象徴する3つのモチーフアイデア

この前提を踏まえ、
しおりのデザインのメインとなるモチーフの
アイデアを出しあいました。
私たちの「家族の絆」や「時間の流れ」
といったコンセプトを
象徴的に表現できるものとして、
主に3つのアイデアが候補に残りました。

一つ目は、木の「年輪」です。
年輪は、木が長い年月をかけて成長し、
少しずつ幹を太くしていく過程の記録です。
これは家族の絆が時間とともにゆっくりと育まれて、
少しずつその輪を広げ、
より強く太くなっていく様子を
表現できるのではないかと考えました。

年輪が刻まれた木材のように、
家族の歴史が刻まれていくイメージは、
温かく力強い絆を象徴するものとして魅力的でした。

二つ目は、海の「波」です。
寄せては返す波の模様は、
変化し続けるもののように見えて、
海という根源的な場所と常に繋がっています。
家族の関係性も、子どもの成長や環境の変化とともに、
時に穏やかだったり、時に激しかったりと、
その形を変えていくことがあります。

でも、どんな変化があっても、
家族という繋がりそのものは変わらない。
寄せては返す波模様は、
そんな家族の関係性の移り変わりや、
困難を乗り越えながら続いていく
家族の歩みを表現できるのではないか、と考えました。
ダイナミックだけど
変わらない繋がりを感じさせるモチーフです。

そして三つ目は、「地層」の断面図のような、
積み重なっていくデザインです。
地層が長い時間をかけて、
一つ一つの層が積み重なって作られるように、
家族が一緒に過ごす日々の時間も、
少しずつ積み重なって、
それぞれの歴史を作っていきます。

一緒に笑った時間や、乗り越えたこと、観た景色。
そんな一つ一つの瞬間が、地層のように積み重なって、
目には見えなくても
確かに家族という存在の土台を形作っていく。
そんな時間の積み重ねや、
共有された経験を表現するモチーフとして、
地層が候補に挙がりました。


▷モチーフの選択と試行錯誤の始まり

この3つのモチーフは、
どれも「家族の絆」や「時間の流れ」というコンセプトに
深く関わるものとして魅力的でした。
でも、デザインを具体的な形に落とし込む段階で、
いくつかの検討が必要になりました。

特に、年輪のモチーフは、
発想としてはとても気に入っていたのですが、
「どう並び替えても繋がる」という
デザインにつなげることが難しく
今回は断念することになりました。

結果、最終的に「波」のモチーフと「地層」のモチーフで、
実際にデザインを進めてみることになりました。
波のように流れのある繋がり、
そして地層のように積み重なる時間。
どちらも家族の物語を表現するのに
ふさわしいテーマだと感じました。


素材も決まり、メインとなるモチーフも絞り込まれました。
いよいよ、このアイデアたちを
具体的なスケッチやデータに落とし込み、
真鍮という素材で形にしていく作業に入ります。
ここからが、モノづくりの面白さでもあり、
難しさでもある段階です。

家族の絆や読書への思いを込めた真鍮のしおり。
どのようなデザインになるのか、
私たちも完成が待ちきれません。