hatto

2025/01/23 15:12

リビングの空気は穏やかで、
窓からの光がやわらかな模様を描いている。
テーブルの上に置かれた小さな木製の箱。
その表面には、ふたつの円が少しだけ重なり合った形で刻まれている。
 

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息子が生まれた日のことを思い出す。
陣痛の波が何度も押し寄せて
ようやく迎えたその瞬間、
赤ちゃんの産声が部屋を満たした。
 
へその緒を切ったのは夫だった。
その時の手元を見る余裕はなかったけど、
「命のつながりを断つ」という重要な役割は
父としての第一歩だったのかもしれないと思う。
 
 
ふたつの円が少しだけ重なっているこのデザイン、
それは母と子の関係そのもの。
ひとつの命がもうひとつの命と重なり合い、
でも完全に同じにはならない。
親子の距離感やつながりを象徴しているようでもある。
 

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6年と少し前の息子は
私の体の中にいて、まさに一心同体だったんだよなぁ
としみじみ思い出す。

春から小学生になる息子は
あっという間に大きくなり、
自分の世界をどんどん広げていく。
その姿を見るたびに嬉しさと少しの寂しさが交錯する。

でも、どんなに成長して世界が広がっても
あの時間が消えることはない。
へその緒という存在が、まさにそれを象徴している。


ケースを開けて、そにあるへその緒を見るたびに、
これからも続いていく親子の物語を感じる。
 

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このへその緒ケースは、ただの箱ではないのです。
それは新しい命の始まりと、
母と子が共有した時間をそっと記憶するもの。
 
これから息子がどんな道を歩んでいくのか。
その先にどんな景色が広がるのか。
このケースを手にして、そんな未来を想像する。
 
木のぬくもりに触れるたびに、
母としての私の軸が少しずつはっきりしていく。

このケースが、
わが家の新しい物語を見守ってくれる存在であることを、
私は感じている。